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「第五回 マスタとしての人事システム」
[ 更新日 ] 07月04日 14時23分[ 更新者 ] コンサルタント 松木 剛
【退化してしまった現場人事】

工場の勤務経験がない私ですが、工場の労務管理は大体知っているつもりでした。しかし現場の生産管理における人的情報の扱いには驚いた経験があります。
生産管理システムをパッケージに置き換えるプロジェクトをしている時です。
当時はまだCIM(コンピュータ支援生産)の時代で、ERPの前身、MRPⅡの時代です。人事情報の一部を生産管理に取り入れることで人事システムとインターフェースする機能は求められていたのですが、現場の人事管理は前より悪くなったという批判を頂きました。どういうことかと尋ねますと、手作りでやっていた時は、作業員が休暇や病気で休むと生産管理上の必要人員(負荷積みという場合もあります)の情報が自動的に変わっていたというのです。つまり工場の勤怠管理から情報が生産管理システムの必要資源にアップデートされ、組立現場や製造現場にアラームが立ったりする機能がなくなってしまったというのでした。
ERPが華やかに喧伝される昨今ですが、こういう機能を持つ、あるいは実現している事例を私は知りません。ここでERPの機能の話をするつもりはありません。しかし人事部や人事システムを管理している人は、一線の現場人事の必要としている情報を分かっているのか、今一度考えてみるべきだと思うのです。それは情報の種類とタイミングという切り口があります。

【リソースとしての人材】

最近はHRM(ヒューマンリソースマネジメント)ではなくHCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)と表現するらしいです。資源なのか資産なのか、要は活用するから育成するに視点が移っていることをアピールしたいようです。人を大事にするのは良い傾向です。しかし人材が経営資源であることには変わりありません。
一般に製造から発想しているERPには、生産用具として人材を考えている節があります。従って現場には必要人員が何名とか、マンアワーと呼ばれる時間と人員を掛け算したものが単位として使われています。必要資源というのは、例えばある製品を作るのにこれだけの材料と機械工具と電気や燃料、そしてオペレーション(操作)する人手が必要だと算出することからはじき出されます。従って人的資源といっても、ある程度の能力(旋盤を使うとか組立知識があるとか)があるとした上で、ヘッドカウント(頭数)で対処します。それでも、「今日はあいつは風邪をひいて休んでる」とか「急な海外出張で10日間は帰らない」とかの情報には敏感にならざるを得ません。人がいないと生産ができないのですから。
こう考えると企業を運営していく上で本当に必要な人材情報というのは、生産やサービスで付加価値を生んでいる現場が必要としている情報、つまり人的リソースの在庫状況なのかもしれません。

【量から質への要求進化】

せっかくERPのプロジェクトを推進している企業でも、人事情報システムだけは国産の業務パッケージでいいや、という「画竜点睛」を欠く結果になっている例が多くあります。確かにERPは片肺飛行できるよう、生産管理系にも人的リソースを別に管理できる機能を備えていますが、ダイナミックな情報リンクまではできません(あるいは作ることが必要です)。その場合はよくて頭数の連携になります。
扱うのが人である限り、頭数で管理できるほど世の中は甘くなくなってきました。質的な管理が必要になり始めています。工場でも「多能工化」などの言葉が飛び交っていますが、製造装置ひとつをとってもかなり専門的になっています。
パートタイマ等も専門性を帯びてきていますから、部品表に材質や特性が書かれているのと同様、人的リソースも質的な情報管理が必要な時代に入っています。
これをおまけのような生産管理の人材マスタで処理していくのは無理がありますし、二重管理になります。製造現場やサービスの一線だけではなく、技術が業務の重要な柱になっている組織においても同じです。技能も技術も、更にコンピテンシのような新しい評価要素も登場しています。
儲けを産む現場で必要としている人的リソース情報は、人事情報、いや職務を中心に考えると人材情報になりつつあると言えるでしょう。

【統合データベースの世界へ】

もともと人事部というのはラインで行われている職務上の人材情報には疎いものです。賞罰とか家族情報とか、考課情報という日常的にはあまり扱われないセキュリティが重視される情報ばかりに目が行きがちです。「だから嫌われる」と口の悪い人は言いますが、しかし企業にあっては必要な機能です。情報というものが一律に扱われていた時代、その軽重を管理するのが困難な時代のスケールを基に新しい時代を計っていては企業の成長や生き残りは望めません。
このメールマガジンは情報システムをテーマにお送りしていますが、結局大事なのはあなたの会社の人事データです。機械装置、プログラムの集成のシステムではありません。システムは時代とともに変わります。例えばしごとのやり方も変わっていきます。ましては使い勝手のような評価も慣れや慣習でどんどん変化します。その意味で、あなたの会社の会社を支える方々のデータそのものが活用される仕組みを考えていくのが正当ではないでしょうか。
10名程度の管理が分化していない会社を想像するとお分かりでしょうが、理想はどんな情報も一発で把握でき、(経営)判断ができる環境を持つことです。
統合データベースというのは、単なる情報システムの商品やコンセプトではなく企業の源流にある最も基本的な仕組みであることを理解して頂きたいと思います。
そして人事情報もその枠から逃れることはなく、経営情報として考えていくべきものだと思います。個人情報は業務に必要な情報を重視すべきであり、もしプライバシや秘匿が必要であり、機械上のセキュリティが信用できないのであれば、別管理にしてでも経営上必要としている人材情報を、本当に必要としている現場へオープンにすべきです。そうあって初めて経営に資する人事情報システムになるのだと私は思っています。

執筆者情報

松木 剛
松木 剛
コンサルタント
人事とITのプロフェッショナル
 
略歴

1979年 慶応義塾大学法学部政治学科卒 大手機械メーカーの人事部、情報システム部、経営企画室のマネジャーなど、勤務20年を経て日本オラクルでERPコンサルタントを5年担当。その後ベリングポイント、NTTデータ経営研究所のコンサルタントや、タタコンサルタンシーサービシズジャパンの人事総務部長を経て現職。

資格・講師
  • 情報処理技術者システムアナリスト ITコーディネータ 早稲田大学 大学院会計研究科 非常勤講師(2009年度~)『人的資源管理』担当
実績
  • ERP人事モジュルー導入プロジェクト(オラクルEBS、SAP等)多数 霞が関業務・システムの最適化計画コンサルティング 公的企業人事情報システムコンサルティング 大手企業企業合併に先行する持株会社化プロジェクト 企業防災計画/BCPコンサルティング 業務効率化/BPO化コンサルティング 人事情報システム導入コンサルティング