コラム

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第四回「給与計算だけできればいいのか?」

[ 掲載日 ]2012/04/23

[ 掲載日 ]2012/04/23

  • ERPは大企業だけが利用できる手法ではありません。 中堅企業や中小企業を支えていこうとしているITコーディネータの手法にも、 必要に応じてERPのパッケージを適用することが記述されています。 しかし、現実の中堅企業や中小企業の人事関係のシステムといえば「給与計算」が主体です。 そこから脱皮するための考え方とは。
  • 「第四回 給与計算だけできればいいのか?」
  • 【人事情報を必要としていない人事部長】
  • グループ7000人の機械製造業のある人事部長がこういいました。『私が知っておく必要のある社員は500名だ。 その中でも200名程度をチェックしておけばいいんだ。だから人事情報システムはいらないんだよ。』
    確かに現業の社員と重要な仕事をしていない社員を除けば、そういう選択と集中で企業運営ができるのでしょう。 しかし、前回お話したように、人事情報システムが人事部、または人事部長のためだけにあるわけのではないことはご承知ですね。 こういう中央集権的な管理をしている企業では、おのずとシステムがそういう体質を追随したものになりがちです。 人事部も給与計算などのオペレーション中心になるか、福利厚生などのサービス業に徹することになります。 経営課題を実現する人事部といった観点が薄くなるような気がします。
  • 【100名を超えたら】
  • 人事管理は個別人事と労務のようなマクロ的な管理がありますが、 確かに社員数が少ないうちはシステムのお世話にならなくともやっていけるようです。 しかしそれは人事管理側からみたもので、最近の勤労者の意識から考えると、キャリア管理のような機能は、 企業の大小に関わらず大きな期待になってきています。
    最近の人事部の大きなテーマは、 経営課題の実現と社員個人の目標の実現を支援することだとする意見も多数を占めてきました。
    中小企業と大企業の差は給与待遇の面だけの差に止まらず、個人の成長に現れるといいますが、 管理側の必要性だけでなく社員からのニーズについても考えていく必要が出てきました。 このあたりのお話は、人事情報システムの個別の機能を考えるときに詳しくお話しましょう。 さて、管理側の必要性としても社員が100名を超えるあたりから、 人事部長の勘ピュータでは対処できなくなるのはご想像の通りです。 如何に人件費を抑えたオペレーションを実現していようとも、人ができないサービスレベルというものがあるはずです。
  • 【検索だけが人事情報システムではない】
  • 私の先輩の人事マンで、非常に切れる優秀な人でしたが、人事マンが陥ってはいけないところにはまってしまった人がいました。 人事マンにはいろんな「べからず集」がありますが、『士、別れて三日、即ちさらに刮目してあい待す。』
    という中国の名言があるように、固定的に人物をみては真実を逃すことになります。 「あいつはこういう奴だ」という決めつけをすることは、ある意味では効率的かもしれませんが、多くの面で困った事態を引き起こします。 あなたの周りの管理職さんでも結構そういう方がいるかもしれませんが、人事マンはそういう会話をしてはいけません。 「人事システムは生産管理システムほどダイナミックではないから面白くない」といったシステムエンジニアもいましたが、 確かに従来のシステムはそうだったかもしれません。しかし時代は動いています。
    ダイナミックな情報の検索システムは難しいが実用に役立ちます。 しかし、ホストコンピュータの世界から飛び出した人事システムは、本当はダイナミックに成長している社員の活動や成長記録を蓄積し、 検索できるレベルにきています。
    検索というのはある仮説を基に、情報を探すことだと思います。 従って、仮説のない場合には必要を認めない機能なのですが、その意味では人を選ぶ機能かもしれません。 人を育てることが人事情報システムの目的になり始めているのです。
  • 【給与計算は大事だけど】
  • アウトソーシングというソリューションをご存じだと思います。外部委託の事ですが、費用対効果を考え委託する場合もありますし、 人材がいない、または育成するまで待てない,今すぐやりたいといった場合、つまり時間を買うというケースもあります。 中小企業では給与計算をアウトソーシングする例が多いのですが、それは内部でやらなくてもはっきり言えばどうでも良い場合が多いのです。
    給与計算は、それ自体はどうということがない業務です。給与計算の結果の人件費の管理を経営情報として活用すると事情が変わってきますが、 決まった計算の方法で税金や社会保険、労働保険などを計算して給与を支払うことは、会社の重要な競争力という点では一歩譲ることになります。 従って給与計算単独で考えると、アウトソーシングであろうと内部で行おうと、それ自体で判断する余地は少なく、 費用対効果や体制の事情から判断すれば良いということになります。
    人事が給与計算を行なうのは付随業務であり、より重要な業務遂行にあわせて行なわれているからだと考えるのは行き過ぎでしょうか。 人事管理を行なう情報システムも、単に給与計算を行なう機能だけを期待しているのであれば、 合わせてアウトソーシングを検討した方がメリットは大きいかもしれません。 外部委託を行なった方が費用の面でも人材活用の面でも効率的かもしれないのです。