コラム

コラム

【第2章】人事情報システム導入の進め方 その2

[ 掲載日 ]2012/11/09

[ 掲載日 ]2012/11/09

  • 今回は「企画フェーズ」について考えます。
  • 企画というのは、もちろんシステム導入の概要を考え関係者の同意を得て、実際に作業をスタートするまでを言いますが、 大事なことは「なぜそれが必要なのか」を理解してもらうための努力をすることです。 「Why」が明確になれば、おのずと最善の方法論も見いだせますし、方向を違えることもないと私は考えています。
  • 第2話 企画フェーズの要点(前編)
  • 【企画フェーズのプロセス】
  • 企画の最終目的は、その企画を通すことです。一般に決裁とか稟議とかの意志決定の手順を踏みますが、 「企画書」を作り手続きを行うことになります。企画の様々な作業を行った結果が「企画書」になるわけです。
  • 企画のフェーズは、
  • 1)経営目標の確認と方針の明確化
    2)現状調査・ベストプラクティスの調査
    3)技術要件の調査
    4)ニーズの把握
    5)システム化範囲の確定
    6)費用対効果の検討
    7)企画書の作成
  • と大体こういうステップで作業を進めていきます。では細かく見ていきましょう。
  • 【経営目標の確認と方針の明確化】
  • 人事情報システムは、大きくいえば人事戦略を実現する目的をもって企画されるべきものです。 そしてその人事戦略は経営戦略によって規定されているものです。従って、より上位の方針と整合性がとれていなくてはなりません。 人事だけ別の方針で動いているわけではないことはご承知の通りです。 経営理念や方針、重点施策などを明確にして方向を定める必要があります。
  • ここでの成果物としては、経営戦略が明示されたものとそれを実際に実行するシステム化目標が必要です。 また、人事の切り口からブレイクダウンした戦略人事の構想が必要になります。 具体的には「中期経営計画資料」や人事部門の「経営方針書」、 更には「情報システム化方針書」などが望まれます。
  • こういった大方針がない場合には、システムは単なる効率化を進めるためのツールとしての期待で終わってしまい、 なかなか前向きのシステム化企画にはなりにくい事になります。また企業としての地盤がしっかりしていないと、 たとえ前向きな企画書を作っても、最終的に経営に寄与できるシステム化は望めないでしょう。
  • だいたいここで調査した諸情報が、企画の動機や必要性を物語るものになるわけです。 ここでいい加減にやっておくと理解や承認を頂くための整合性や納得性が得られないばかりでなく、 目的が曖昧とか真の目的が分かっていない等と、計画が頓挫したり差し戻しになることもあります。
  • 【現状調査・ベストプラクティスの調査】
  • たとえ従来のシステムをそっくり入れ換えるとしても、現行の状況を把握しておくことは重要なことです。 機械仕掛けがうまくできても、それを使うのは人間ですから、新旧のギャップなどの把握をすることも大事です。 また管理水準による実現性を検討することも必要になります。現状調査を行うことには、現状の課題を探ることも含まれています。 どういう困った状況があるのか、改善する方向性はどっち向きなのか、その困った問題は致命的なことか、 新システムでは解消されるのか等。
  • またベストプラクティスと呼ばれる、他社で実現している最適なモデルを調査することも必要です。 ベストプラクティスというのは、最適化された業務をいいますが、人事制度の改変を行うとき、 人事部はよく同業他社やモデルになるような企業を調査しますので、お得意のことではないでしょうか。
  • 現状を調査して解消すべき課題を見つけることと、お手本となるような業務を見つけて参考にすることは表裏一体のことです。 これから向かうべきスタイルはたったひとつではありません。また他社と全く同じでもありません。
  • この調査は、業務のあり方とシステムのあり方のふたつの切り口で行うことです。 ただ業務についてもシステムにしても、なかなかドキュメント、つまり資料が揃っていないことが多いようです。 もしない場合は、詳細な資料化をする必要はありませんが、一度整理してまとめてみるのはどうでしょう。 業務の見直しの方向などが見えてくることがありますので、無駄とはいえないでしょう。
  • 【技術要件の調査】
  • ここでいう「技術要件」とは、一種の制約的な要件になります。対象が情報システムですから、 各々企業が持つインフラストラクチャや技術標準的な環境問題があります。 まして、全社でERPの導入プロジェクトが動いていたとすれば、それを無視することはできません。 全く制約がない企画というのもほとんどあり得ない話であり、ネットワークやシステム環境、 更につめるとユーザのリテラシー(操作能力)にまで行き着くことがあります。 この部分は情報システム担当者とご相談するのが良いと思います。
  • 忘れてはいけないのが、導入するシステムのことと合わせて、 稼働後の運用についても思いを及ぼせる必要があるということです。
  • ここで作成する成果物としては、システムのアーキテクチャについての方針や、 運用管理業務方針書などが期待されます。
  • (後編につづく)